『逆光』
「そこで見ていて」
夕焼けを背にして立つ彼が目を閉じる。伸びをしたときや関節が鳴るときのような音と共に彼の体が少しずつ姿を変えていく。腕や脚は獣のようになり、背中からは翼が現れた。頭には一対の角が聳えて禍々しい形を曝け出している。人の姿だったときの面影はどこにも見当たらない。彼の変身の一部始終を目の当たりにしながら、別人と対峙しているような気持ちになった。
「おそろしい姿だろう」
「うん、正直そう思う。君じゃないみたいだ」
指先から伸びる尖った爪を西日が照らす。彼の表情は逆光に隠されて読むことができない。笑っているのかもしれなかったし、悲しんでいるのかもしれなかった。
1/25/2024, 3:19:15 AM