「名前のないものたちへ」
文化って、
掲げるものじゃない
静かに、暮らしの端に灯るもの
おばあちゃんの煮物の香り
靴を脱いで上がる静けさ
手渡すときの「どうぞ」という声のやわらかさ
それらは誰も語らないけれど
誰の中にも確かに息づいていて
「私たちって、こういう人たちだったんだ」って
いつか思い出させてくれる
でも、いつからか
「守らなきゃ」が「触れたくない」に変わって
「大事だから」が「理由だから」にすり替わって
それを口にするたび、どこかが遠のいた
文化は、変わることを恐れない
本当に強いものは、
変わっても、そこにいられる
誇りは、静かで、誠実だ
叫ばないけど、
逃げる背中を、じっと見つめている
わたしはもう
それを理由にして、立ち止まるのはやめたい
受け継ぐって、形をなぞることじゃない
そこに温もりがあるか
その先に光をつなげられるか
それだけを、忘れずにいたいんだ
5/24/2025, 12:04:07 PM