MWの二次創作

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燃える葉



 茶色に染まった葉が、オレンジ色の炎に包まれて、パキパキと音を立てて形を崩していく。
「なんだか風情がありますね」
 隣家に住む浦賀湊が呟く。まだ十代の癖に、大人みたいに言うから、少しおかしくなった。
「縁側に座って、焚き火で芋を焼いてるのを見るんが?」
「はい。郊外とはいえ、東京で見ることがあるとは思いませんでした」
 週末に浦賀家で芋掘り体験をしたそうだ。取れすぎたから、と差し入れしてくれたものを、その場の思い付きで落ち葉を燃やして焼き芋にしている。
「あら、良い匂い」
 隣家の窓が開き、湊の母親が顔を出した。
「焼き芋ですか」
「はい。今落ち葉取り放題なんで」
 庭掃除を怠っているだけとも言う。
「風情があっていいですねぇ」
「そうですね」
 親子同じことを言う。貯めていた落ち葉を焚き火にかけると、バチバチと音が変わり、火の粉が舞った。
 母親は赤ちゃんのグズる声に引かれ、家に戻った。
「ユウくん」
「もー焼き芋ええんちゃうかな」
 気遣うような湊の声を、聞こえないフリをした。
 焼けた葉の中から、アルミホイルに包んだ芋を取り出す。アルミホイルを開くと、程よく焦げた大きな芋が現れた。
「ユウくん。聞こえてますよね?」
「……ごめん」
 湊が焚き火を挟んで、右前に来た足元が見えた。
「ユウくんは、焚き火は風情があるって、思わないんですか?」
「どーやろ。分からんなあ」
「ふうん。寂しい人ですね」
「どーせ俺は寂しい人ですよ」
 焼き芋を半分に割る。湊の方を見ないまま。
「家族でも生まれ育つ環境は違いますし、感受性の育ち方も変わります。それに半分しか血の繋がりのない他人なんですから。違うことを思ったって、それでも家族なんですよ」
「……そ」
「だから、そんな顔しないでください」
 湊がしゃがんで、顔を覗き込んでくる。
「俺どんな顔してんの?」
「捨てられた子犬」
「誰が子犬や」
 湊が下手な笑いを浮かべるから、つられて変な顔になった気がする。
「ほい。焼きたてホヤホヤの焼き芋やで」
「ありがとうございます」
 半分に割った片方を渡す。
「いただきます」
 湊はその場でひとくち頬張った。
「ど?」
「……すごく、美味しいです。全体がほっこり温かいし、蜜が甘いし、柔らかい。皮もパリパリして美味しいです」
「俺もいただきます。……ほんまや、めっちゃ甘い」
 元の芋が良いのだろう。初めて焼いた素人にしては、出来がいい。
「俺これ、焼き芋屋さん出来るんちゃう?」
「そうしたら、ぼくが毎日芋掘りに行きますね」
「楽しかったんや?」
「はい」
 年相応な幼い顔をする。
 足元でまだ、葉は微かに燃え続けていた。

10/6/2025, 11:55:29 PM