お前の横顔をじっくり照らしている。
海に近い片田舎の、ボロボロのアパートにとってつけたようなベランダの、そのガラスの向こうにお前がいる。
私が反対側からお前の居るアパートを見つける頃、窓から覗いたって姿はない。早起きをして顔を見せてくれよ。
私がお前が住む町の頭上を通る頃、家屋の屋根や影に紛れて姿は見えない。どこで仕事をしているんだ。
私がお前の横顔を照らす頃、私たちはようやく一筋の光で結ばれる。ひとときの間だけ。
私が星の反対側を通る頃、お前は何をしているの。誰と眠っているの。夢の中で私を待ち望んでくれないか。
星の自転がお前を遠ざけてゆく。
徐々に頬が暖かくなっているのが見て取れる。それだけが嬉しく、そして重要な使命に感じられた。
お前に会いにいきたい。横顔だけじゃなくてたくさん見せてほしい。
地球とかいう歴史の浅い星なんかじゃなくて私の元で生きてくれないか。お前が生きている間に人間がそういう技術を得てくれ。残念なことだがこちらに空気はないから。
4/8/2023, 3:10:08 AM