駒月

Open App

 クリスマスにはツリーを飾ってケーキを食べて、みんなで楽しく過ごしましょう♪
「早く寝ないとサンタさんは来ないわよ?」
 そう言われていたから、いつもより早くベッドに入ってサンタさんを待っていた。
 絵本に描いてあった、全身赤い服を着て、白いおヒゲを生やしたサンタさん。ベルを鳴らしてそりに乗り、空を駆けてプレゼントをみんなに配るんだって。
 実は毎年寝たフリをしてこっそり起きてるんだけど、いつも寝ちゃって会えてない。
 だから、今日こそは絶対にサンタさんに会うんだ。この目で本物を見てみたいっていう好奇心は止められない。

──結論、そんなことは考えなければよかった。

 布団を被っていると遠くの方からシャンシャンとベルが鳴り、サンタさんのそりが近づいてきてるのがわかった。
 ワクワク、ドキドキ。
 そしてついに、私の部屋にサンタさんがやってくる。開けておいた窓がギィと音を鳴らした。
 サンタさんは「ホーホーホー!」と笑うらしい。本で学習済みである。
 だけど聞こえてきたのは、ギチギチという機械のような変な声。フローリングの床をカツカツと硬いもので刺すように歩く音。
 そっと毛布から覗くと、四つん這いになった黒い何かがそこにいて。赤いひとつ目が、同じようにこっちを覗きこんでいた──

 目が覚めると朝だった。
 昨日のは一体何?あの黒くて気味の悪いバケモノは何?私はあれからどうなった?
 夢じゃなかった。だけど特に変わったところはない。自分の体も何ともない。窓際に置かれたプレゼントの箱の中から、ギチギチという声がする以外は……。

 プレゼントは怖くて、両親に頼んで処分してもらった。鉄製の古いロボットみたいなものが入っていたらしいけど、それ以上は聞いていない。
 それ以来私は、クリスマスベルのシャンシャンという音が苦手になってしまった。
 戸締まりをしっかりして、夜は早く寝るに限るね……

 

【ベルの音】

12/20/2023, 12:35:09 PM