鋭い眼差し
「あいつ、ほんとに大丈夫か?」
「大丈夫だと思いたいけど……」
茂みから二人して教室の中を窺っていた。窓の内側では、馴染みのアイツが追試験を受けている。先日の期末試験で欠点を取ったがための蛇足イベント。今日合格点を取らなければ夏休みの補習が確定。3人での夏の計画は延期、場合によっては中止になる。
「集中力ねぇな、おい」
ぼやく友達の先で、アイツは呑気な顔でシャーペンをくるくる回している。時折、解答用紙に何かを書き込んではいるが、果たして真剣に解いているのかどうか。
「でも、いつもあんな感じじゃない?」
「まぁたしかに。ある意味で順調といえるか」
普段から能天気で、ふざけるために生きているようなやつなのだ。姿勢を正して、まじめ腐って勉強している方が怖い。
と思った矢先、アイツの目が鋭くなった。じっと解答用紙を睨みつけ、何かを熟考し始める。シャーペンを顎に当てて眉間に皺を寄せる。完全に自分の世界に没頭していた。やがて解答欄に何かを書き込むと、満足そうな表情で一つ頷いた。
「あ、あれは……」
「まさか……」
僕たちは揃って肩を落とした。
あれは、いいボケを思いついた時の顔だ。
10/15/2024, 5:50:00 PM