27(ツナ)

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光と霧の狭間で

友人がある日、突然仕事をやめて消えた。
人づてに半月も色々と探して、ようやく居場所を突き止めたが、友人は地方の山奥にいた。

「おい、探したんだぞ!急に連絡がつかなくなって心配したんだ。お前ひとりなのか?奥さんはどうしたんだよ。連絡つかなくてさ。」
「…。」
「おい、おい聞いてるのか?もう少しで捜索願い出すとこだったぞ?」
「…。」
友人がおかしい。目が据わったまま口角だけ上げて、ずっと山の方を見ていた。
俺の質問には全くの無反応で、しばらく俺も無言で様子を伺っていると突然口を開いた。

「…光と霧の狭間で。」

「は?光と、霧?狭間?なんの事だよ?」
「光と霧の狭間で。」
顔は俺の方を向こうとせず、口だけが動いた。
俺は気味が悪くて、逃げるようにその場を後にした。
友人は「光と霧の狭間で、光と霧の狭間で、光と霧の─────」まるで壊れたロボットのようにそれだけをずっと繰り返していた。

10/18/2025, 11:42:40 AM