たなか。

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【誰よりも、ずっと】

誰よりも、ずっと近かった。小さい頃はそんなこと思わずにただ、みんな友だちみたいに無邪気に遊んでいたんだ。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ!」
公園で遊んだら誰でも仲良し。怖いもの知らずだった。それが今じゃどうだ。この有様だ。毎日、人との対話で精神をすり減らしながらギリギリで息を吸う。あの日、遊んでいた子たちは今何をしているんだろう。そんなことを思いながら夜遅くなった人の少ない道をわずかな流れに沿って歩く。鬼ごっこまたしたいな、なんて空を見上げながら思う。私の青春は、私の昔の強さは、見当たらない。いい子にしたのに私は迷子。
「捕まえた。」
歩いていたら後ろからそんな声がした。ふと振り返ればそこには“友だち“がいた。鬼ごっこをしたうちの一人。初恋の男の子。家が未だに近いことは知っていた。職場が近いことも。こんな時間まで仕事かなんて同情せざるを得ない。
「迎えに来たよ。」
「なんで、迎えに。」
意味が分からずに手を引かれた。付いてこれば分かると言ってある場所へ導かれる。でも、こうして手を引かれるなんて昔以来だった。
「足が遅いのなんてなんだ。手を引いて走れば引っ張られて早くなれるだろ?」
足が遅くても鬼ごっこが好きだった理由。手を引かれるままに私は昔みたいに笑いだしてしまった。
「ねぇ、迎えに来たならどこまで連れて行ってくれる?」

4/9/2023, 4:46:22 PM