たなか。

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【たとえ間違いだったとしても】

たとえ間違いだったとしても、もういいから。もういいから、一度だけ。やり直せるならきっと、後悔しない方より後悔する道を選ぶと思う。それでも、手に入れたかった。君の幸せとか考えられないから。
「もう一度連れていくよ。」
夢の中に。手を取って、彼女の意識をもう一度こちらへ。本来はいるべき場所でない場所へ。なんせ、悪役なんだ。悪役っぽい悪いことをしなきゃ。人攫いなんて悪役っぽいでしょう?
「君が望まなくてもずっと傍に。」
「なんかさ、こうなる気がしてたの。連れ去るくらいならどこまで連れ去ってくれる?」
ビー玉じゃないその目には僕にない光があった。君は目を光らせてくれるんだ。僕の我儘にも付き合ってくれるんだ。きっと、君がこちらの世界に呼ばれて悪夢しか見れなくなる前になんとかしてくれたのは正解だった。元の世界に帰って元気に暮らすのが正解なはずたったのに。たとえ間違いだったとしてもそれが僕のための最適解だったから。君なしじゃいられないのはずっと僕だったかもしれない。
「夜は寂しくて何かに縋りついてないと寝られないんだ。僕が悪夢を見なくなるまで。君にこの世界を見てほしい。」
「独りは寂しいもんね。分かるよ、貴方が望むならいつまででもきっと囚われていてあげる。」

4/22/2023, 6:25:09 PM