「いつも同じこと言っても涼しげに聞いてるのに、こういう時は照れるの」
イタズラっぽくそう言って、唇の縁を撫でるあなたの顔が、あんまりにも勝ち誇っていたから。
「…そういうところが、“好きだよ”なんでしょ?」
微妙に目を逸らしながら、とびっきりの可愛らしさとちょっとの小憎らしさを精一杯装って、返す。
「…生意気」
掠れた声で、呟くあなたの目が言っている。
好きだよ。
…私も。だなんて素直に返せる私じゃないし、
私が好きなのは、そんな私を好きになってくれたあなただから。
素直になんて、なってあげない。
手を伸ばすと、柔らかい頬が触れた。
「言葉では言ってくれないの?」
ふわふわとした言葉で、あなたが笑う。
微妙に目を逸らす私に、あなたが微笑する。
「素直じゃないけど、好きだよ」
囁くように告げるあなたの声が、あまりに真っ直ぐで、嬉しくて、気恥ずかしくて、息の合間に「あっそ」と呟く。
あなたの笑顔が深くなる。
優しいあなたのその笑みの時に、目尻に出来る細かな皺が、私は好き。
笑みと一緒に、優しく、慎重になる滑らかなあなたの仕草も好き。
私の、逸らす目線に合わせようと、そっと私の頬に添えられる、あなたの人差し指と中指と薬指の優しい感覚も好き。
好きだよ
心の底から込み上げるその言葉を、うっかり口から漏らさないように内唇を噛んで、
私はあなたの「好きだよ」を聞く。
あなたの「好きだよ」を感じる。
4/5/2025, 3:35:42 PM