ななしろ

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 ええ、そうね。まどろみの時間はここまで。鐘の音が聞こえたのなら私たちは朝を迎えなければならない。耳を塞ごうとも、霧に身を隠そうとも、その時は誰しも平等に訪れる。
 私にとっては終わりの朝。あなたにとっては……ああ、いえ。答えなくていいのよ。日中の過ごし方は私たちの間には関係ないものね。もう一寝入りするならご自由に。私は帰らせてもらうわ……区切りをうやむやにするのは一番よくないから、ね。
 ふふ。ねえ、かわいいひと。もう一度って思ってくれるなら、それは夜の鐘が鳴る頃に。始まりを告げる音が響いて、下りた帳が何もかもを隠してしまう時に。また私を買ってちょうだいね。

9/7/2023, 8:44:06 AM