NoName

Open App

夢の断片(オリジナル)

「人はなぜ眠るのか。理由はわかっていないが、逆に、眠るために昼間起きて活動していると考えると説明がつく」
という話がテレビから流れてきた。
そこで私はハッとする。
幸せな夢はいつも断片的にしか覚えていられない。
クラスメイトと楽しく遊んだり、母親と仲良く買い物に出かけて美味しいご飯を食べたり、遊園地に行ったり、街中でスカウトされてドラマに出演して絶賛されたり。
現実は辛い。
父親が鬱からの自殺、母は恋人と出かけてほぼ家にいない。服もご飯も満足に与えられず、いつも学校では臭い、ばっちい、あっち行けといじめられている。
眠る方が本質で、こんな現実がただのオマケなら、他で代替すべきではないのか。
現実の方を断片とし、眠りの方を連続させたい。
その一心で猛烈に勉強し、研究し、ついに、ずっと眠っていられる装置を開発した。
眠っている間、意識を夢に集中させるため、脳波や電気信号をコンピュータに反映させる。
最初は肉体の脳の域を越えなかったが、AI学習やディープラーニングも効率よく使った結果、徐々に拡散されていき、夢とネットの海の境界が曖昧になり、ついに肉体を忘れてしまった。
ネットの渦は起きている人間の現実だが、その海にただよう自分は果たして寝ているのだろうか、起きているのだろうか。
最初はある程度自我を保ち、脳の拡散を抑え、都合の良い夢のようなものを紡げていたが、たくさんの刺激的な情報に触れているうち、そちらの方が面白くなった。考えることをしなくなり、ただただ情報の海を漂うだけの存在になった。そしていつしか、彼女を形作っていたものは霧散し、消えてしまった。

11/21/2025, 2:45:29 PM