村人ABCが世界を救うまで

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遠くで獣の遠吠えが聞こえる。
それまで薄雲が空を覆い、陰鬱な夜の世界だったのに。ごうと上空の風が一際強く吹くと一気に雲が開いた。辺りが白銀色に染め上がっていく。

魔力の高まる夜の世界と誰が言ったんだろう。昼も夜も関係ない。
衣服は破れ、髪も乱れ、ただ1人空に手を伸ばす小さな魔族は、この世界の均衡を正そうと生命を削っている。風が吹いてまた夜が明るくなる。

街の子供は寝ただろうか。このように明るくて、人々は不気味に思うかもしれない。

私だけは綺麗だと思った。あの人の背中は必死に鍛えた跡があるけど、まだ小さくていじらしい。守ることが出来ないだろうか。そう思った瞬間、仲間の声を振り切り、私は石畳をはしりだした。
電流のような抵抗を感じながら、彼に近づく。風に揺らぐ身体を抱きとめて、覚悟を決めた。
「一緒に背負うから」
たぶん気配に気付いていたんだろう。優しい面差しはゆるりと振り返る。
何を怖がっていたんだろう、小さな頃と何も変わらない。私があなたを守ってあげなきゃいけない。だってあなたの2個お姉さんなんだからね。


月夜

3/7/2026, 11:48:50 PM