Largo giocoso

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『タイムマシーン』



また今度、があるなら、

どんなによかっただろう。

あの時、私は何をしていたのだろう。

今になって思い返す。

あの時、私があの道を通らなければ、あの人は泣かなかったかな?

私は今も、冷たく澄んだ空気を肌で感じているのかな?

そんなこと今更考えたって、どう足掻いたって過去は変わらない。

未来だって、ほんのちょっとした出来事で変わる。


本当に、ちょっとした事で。


ただ、あの時、立ち止まらなければ、きっと今の未来はなかっただろう。



けれども、私にはどうすることも出来ない。

地獄のような日々。

毎日浴びる冷水に、暴言。

大事な人もどこかへ行き、唯一の心の支えもぐちゃぐちゃにされた。

その事がフラッシュバックすると、いても経っても居られなかった。

本当に、私はあの時、あの道を選択する他なかったのだ。

たとえ、私に明日があったとしても、それは無意味な明日だっただろう。

過去に戻ったって、未来へ行ったって、今は変わらない。


ただ、あの人が泣いて、私は初めて後悔した。



私は1歩ずつ、真っ暗闇へと落ちていった。

二度と照らされることがない本当の --へと。




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あの人が処刑され、49日が経った。

通知が来た時は本当に驚いた。

小学生の頃から優しかったあの人が、5人の同級生を滅多刺し。

「殺したくなった。」

と、本当なのか分からない言葉を言い残し、この世を去った。

あの人は小学生の時、その5人からかなり過激なイジメを受けていた。

私は途中で引越し、よく分からないが、どうやらあの人は登校拒否になり、そのまま中学も通わず、高校にも通えず、日々を送っていたみたいだ。


私はまだ、あの人の返事を返していない。


ただ、ありがとう。と、言いたいのに、あの人はもう、この世に居ない。

そう思うと、涙が止まらなかった。


過去に戻れたら、今を変えられたら、どんなにいいか、私には想像ができない。


少なくともあの人がまだ私のことを思っていたのなら、あの人は私の横で笑っていただろうか?

いや、わからない。


もう、何もかもが、遅すぎたのだ。





1/23/2023, 10:26:54 AM