『朝、目が覚めると泣いていた』
朝、目が覚めると君が泣いていた。
気が強くて弱みを見せない君が、快楽以外で見せた初めての涙。
行かないで。
布団を握りしめ切なそうにそう寝言を零す。
その相手は勿論俺じゃない。
俺と君は寂しさを埋め合うだけの関係。
何度も身体を重ねるもそこに愛はない。
瞳に溜まる涙が頬を伝ってこぼれ落ちる。
起こさないよう、人差し指で涙を軽く拭っては初めて見る君の涙を暫く眺める俺の心に、さざ波の様なざわめきが沸き上がった。
あぁ、これは気付いてはいけない。
頭に警告音が鳴り響く。それ以上は駄目だと。
俺はベッドから降り、振り払うように脱ぎ捨てていたシャツを着ると部屋を後にした。
お互い干渉しない、愛さない、それが二人の間のルールなのだから。
7/11/2022, 3:40:39 AM