たまき

Open App

#10 明日世界がなくなるとしたら、何を願おう。


「それなんてノストラダムスよ、やめてよ」

「いやいや、まあまあ、考えてみてよ」

「絶対いや。あんた全身麻酔受けたことないからそんな事言えるのよ。あれ凄く怖いんだから」

「確かに無いけど。そんなに?」

「周りがわーわーやってる中で知らない天井見ながら意識が遠のいていくのよ。あんなの、成功率とか関係なし。せめて、あんたの顔でも見れればマシだけど居ないし。おかげで涙出たわよ」

「そ、そうか…えっと、プリン食べる?」


プリンで機嫌が取れたかどうかはさておき、

世界ー今回は世界そのものとしておく-が無くなるということは、
全ての営みが無に帰すということだ。

将来に向けた努力も、
守りたい誰かも、すべて、全て。
なんて刹那的で暴力的な前提条件だろうか。


その上で何を願うか?
まずその世界がなくなるところを何とかして欲しいところだが、抗う術はないのだろう。

最後にやりたいことを、と言ったところで
欲望に際限がないのが人間なので、
終わりを歓迎するにしろ厭うにしろ、
その瞬間には、もっと欲しいと願うはずである。

終わりに満足できるのは、真に満たされ受け入れたものだけなのだ。

ならばいっそ何も知らず、苦しまず、
ただいつも通りに眠りにつきたい。

そうすれば、
無力感にも絶望にも苛まれることがないのだから。

5/6/2023, 12:47:48 PM