飛ぶ鳥跡を濁さずの心構えで、飲食店を利用した後は、できる限り皿もテーブルも椅子も綺麗にしていく。どうしても、口の周りだけ汚して気が付かずに立席してしまうが、生まれつきの癖だ。致し方ない。
前田エマの『動物になる日』に収録された『うどん』を読んで以来、上記の心構えをするようになった。果たして、小説に描かれた登場人物のように、店員の気持ちを爽やかにさせる潔い去り際が出来ているだろうか。
臆病になって、思わず他者の顔を窺ってしまうが、コップ一杯の水までも飲み干したのなら、もう十分だ。
そもそも、渡り鳥のように偶然入店してきた見知らぬ人間に、座る場所を譲った上、コップに水を注いで、料理をもてなしてくれるのだ。
金銭だけのやりとりに意識を向けてばかりでは、見えてこない繋がりにもっと触れたまえ。コップの水までも胃の中に入れて、ごちそうさまと言えば、私も相手も心まで満たされるだろうよ。
そう自分に言い聞かせて、お前はどこへ行っても、どんな料理を食べても、どの人物と出会っても、自分のままでいられるから、もっと遠くへ飛んでいけと夢を見る。それこそ、前田エマのように日本と韓国を行き来できる渡り鳥のような生活を過ごしてみたい。
私なら、日本と台湾を行き来する鳥になりたいものだ。日本へ帰る私に「一路順風」と文字通り、手を振って風を送ってくれるそんな光景が日常になって欲しい。
(250529 渡り鳥)
5/29/2025, 1:03:38 PM