『secret love』
やってしまった、と思った。
仕事でミスをした。自分の確認不足だった。
幸い、早期に気づいて大事にはならなかった。
「次からは気を付けて」
ある程度の注意を受け、助けてくださった先輩はそう言って、自身の仕事へと戻っていった。
その背中を見ていた時だ。
『どうしてお前はこんなこともできない』
頭の中で声がして徐々に視界が滲んできた。耐えきれなくなった目の縁はいくつか水滴を落とした。
急ぎトイレへと向かい、鏡を見る。
鏡には涙を溜めて痛々しそうな表情の自分が映った。
『どうしてお前はこんなこともできない。役立たずとはお前のこと、いっそ死んだ方が周囲も助かるだろう』
『こんなことで泣くなんて、お前は惨めで可哀想だな』
『だが、私だけが可哀想なお前を憐れんで慰めてやる。ほら、もっと惨めで可哀想になってごらんよ』
そう呟いて、鏡に映った私は微笑んでみせた。
9/3/2025, 4:37:37 PM