美佐野

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(二次創作)(無色の世界)

 一面に広がる真っ白な、雪、雪、雪!
「…………!!!」
 昨日までは秋だったのだ。確かに今朝、急に冷え込んだなとは思ったが、たった一夜でここまで雪まみれの世界になるなんて、誰が考えるだろう。牧場主ナナミは、外の世界に飛び出した。
「ひゃっはーー!!」
 柔らかく冷たい雪の牧場をひたすらに走り回る。通った場所に足跡が残るのも良い。ついつい、その足跡を使って地上絵を描いてしまった。次に、雪玉を大量に作って積んで、次々に投げまくって遊んだ。中には花や木の実が入った雪玉も混ざっていて、ちょっとした宝探しやくじ引きのようだ。お昼ご飯を食べるのも忘れ、冬の作物を畑に植えるのも忘れ、ひたすら無色の世界を堪能し続ける。
 やがて17時になった。
「何をしているんだね」
「ひゃっ?」
 その時ナナミはちょうど、雪をかき集めて雪うさぎを作っていた。子供の頃、テレビで何度か見かけたことがあり、一度やってみたいと思っていたのだ。
 やってきたのはフォードだった。フォードは、無言でナナミの前までやってくると、その手を取る。想定外の出来事と距離に、ドキン、と胸が高鳴った。だがフォードはどこまでも真面目な顔だ。
「冷え切っている。君の手まで色を失いかけているじゃないか。どれだけの時間、外にいたのかね」
「えっ……朝からずっと……」
「ずっと?」
 フォードがナナミの顔をじっと見る。メガネ越しに、こちらを射抜きそうな紫の瞳は叱責にも、呆れにも見てとれる。その間、ナナミの手はフォードの両手に挟まれていて――。
(先生の手、おっきい……)
 男の人なんだと意識した途端、今度は顔がぼん、と熱くなった。フォードは当然、こちらの変化など気付く気配もなく、ただただあかぎれや霜焼けについて注意喚起を続けている。変わらず真っ白な世界の中で、ただナナミの頬だけがほんのり色付いていた。

4/18/2024, 12:04:48 PM