安達 リョウ

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最初から決まってた(偶然もまた運命)


お面に綿あめ、水ヨーヨーに金魚すくい。
祭りの屋台を一通り堪能して、満足気に歩く双子の姉妹の後ろを足取り重くついていく。
例の如く親から世話を押し付けられた俺は、双子の夏祭りに連れてけコールに屈し、今日もよろしくものの見事に奴隷と成り果てていた。

「にいにたこ焼き」
「たこ焼き」

お腹が空いたと連呼され、俺は問答無用で長い列に並ばされる。
―――双子は向かい側の通行止の路肩に肩を並べて座り、ヨーヨーがどうの金魚がどうのと喋り倒していた。
まだ幼いとはいえ性別は女、喧しさは既に身についているようだ。

「まったく長蛇の列じゃねーか。いつになったら買えんだよ」
本来この夏祭りはあのプールの後、皆で来る約束をしていたはずだったのだが―――何人か都合がつかなくなり、そのまま有耶無耶になってしまった。
肝心の彼女は来ているんだろうか。
………聞けばよかった、と今頃後悔するチキンの俺。

暫くしてたこ焼きふたつを手に、双子らの元へ戻ってみると。並んで座る彼女らの隣に居たのは浴衣を着ている、よく見知った―――。
「あ、にいに。おそい」
「おそい」
立ち上がった双子の隣で、にこにこ微笑みながらその人も立ち上がる。

「偶然だね。来てたんだ」
「お、おう」
突然の意中の彼女の姿に―――それもとびきり美人な出で立ちでの登場に、俺は挙動不審になるのを隠せない。
「家族水入らずのとこごめんね。見覚えのある双子ちゃんが見えて、つい声をかけたら話し込んじゃって」
「い、いや全然構わねーよ。そっちは、友達と?」
「うん。今屋台に買い出しに行ってる」
何だ何だ、今日は死ぬ程ツイてるじゃねーか!
てかめちゃくちゃ可愛い。可愛くて直視できん。
「にいに何かヘン」
「うん、ヘンすぎ」
うるせーよ。黙っとけ。

「あ、友達買えたみたい。じゃあ行くね。また新学期、学校で」
双子ちゃんも、またね。
笑って小さく手を振る彼女に、俺はたこ焼きを持ったまま咄嗟にあのさ、と声を上げた。
「もし良かったら今度、」

「「あ」」

ヒュルヒュルと空を切って昇る、一筋の線。
花火!!のハモりと共に辺りに劈く爆音と派手に開いた、一瞬の大輪。
―――周りの目が一斉にそれに注がれた後、我に返ると俺に笑顔で手を上げて去って行く彼女の姿が目に入った。

ああ………、とはなったものの、今日は短くとも会えただけでラッキーだ。
というかこいつらがいなきゃこんな偶然にも遭遇しえなかったと思うと、何とはなしに崇め奉りたい気分になる。

「………お前ら、ご褒美に何が欲しい?」
俺の突然の“ご褒美”に双子がきょとんとする。
彼女らは暫く頭を捻って考えた後、

「「ビエネッタ」」

………またもハモられたそれに、お前らどんだけ好きなんだよと呆れながら、俺は二人の頭をわしゃわしゃとかき回した。


END.

8/8/2024, 7:57:50 AM