自転車に乗って、お題は走る。
それを追うのはいつも僕。
「待って。待ってよ〜」
こんなことを書くつもりはなかったのに。
昨日のお題だって、あんなの書くつもりはこれっぽっちもなかったのに。
「心の健康」から、どうして大乱闘リアルタイムブラザーズになったのか。不明。不明だ。
心の不健康がダダ漏れ。
ご存知の通り、お題を追う僕は、文字を落としながら走っている。
コインを落として三千里。それが天の川になっていく。
足元から自身の後方へ遠ざかっています。
誰か、拾っちゃってください……
差は少しずつ縮まっているようだが、秒速3センチメートル程度である。
何メートル離れているかなんて、追跡している僕の心に余裕はない。ただ走っているのである。
連鎖的な音が鳴っているのを、僕は無視しなければならない。
あれが止まりません。
あれとは、何ですか。
文字です。
血反吐のような文字です。
お題、目の前のお題……。
かごにお題を載せた自転車も、よろよろとしている。
今にも倒れそうだ。
T字ハンドルを左右にゆらゆらさせて、前輪はイヤイヤ期の子どものように揺らしている。
煽っているように見えるが、どこか憎めない。
毎日の日課になろうとしているからだろうか。
地面はものすごく乾いている。
途中、水たまりがあった。
そのため、前輪と後輪の轍が直線的に交差する。
軽い螺旋を地面に描く。
よろよろ、よろ喜び。
ふらふら、フラダンス。
かすれて地面に書けなくなると、ちょうどよく水たまりポイント(補充地点)を通るので、細いタイヤは再び描くことができる。
その薄れゆく轍の跡に沿って、僕の濡れたフットマークが重なる。僕を追ってきた人にだけはわかる、キリトリ線。
「もう、疲れたよう……」
そんなことを言うと、ようやく自転車は、行く当てもなく立ち止まり、やがてガタンと音を立て、倒れた。
ふう、ようやく止まってくれた。
僕は息も絶え絶えになった運動不足のひょろい身体を落ち着かせた。
しゃがんで、ふらっと意識が遠ざかり、大の字。
バシャンッ……。
倒れた自転車は、水たまりの大きいバージョン、湖のほとり。その近くの浅瀬で倒れてくれた。
ああ、全身がすずしい、と思いきや、
「あちっ」
湖の水は、昨今の猛暑により随分と暖められたものだった。淡水湖だから、天然の温泉。
しかし、温度が容赦ないので、このままではのぼせてしまう……。
僕は今すぐ追跡者から救助者になって、溺れた自転車を重労働により立て直した。
逃げるようにペダルを漕ぎ始める。
そして、今きた道を、口笛を吹きながら、おうちに戻っていくのだ。
行きは走り、帰りは自転車。
片手をハンドルから放し、キリトリ線の通りに、道を割くようにして。
そのとき、かごにお題はありません。
倒れた拍子にどっかにいってしまったようです。
だから、最近は帰路の途中でコンビニに寄って、アイスを買うのが日課となっております。
8/15/2024, 9:48:24 AM