300字小説
金メダル
「墓場で運動会……ってマジか!?」
残業の帰り道。真夜中近い墓場から運動会の定番『天国と地獄』が流れてくる。紅白の鉢巻で競技を競う妖達の中に見覚えのある顔があった。
「お兄ちゃん!」
「香菜!」
二人三脚、玉入れ、騎馬戦。俺が中学に上がる前に亡くなった病弱な妹が元気に笑いながら走っている。見たくても叶わなかった望みが目の前にあるのだ。地獄に引きずり込まれても構わない。最後のフォークダンスまで俺は香菜と手を繋いで踊った。
目覚めるといつもの部屋のベッドの中に俺はいた。
「……夢……だよな……」
起き上がると枕もとに手づくりらしい金メダルが。裏に返せば妹の字で
『お兄ちゃん、ありがとう。とっても楽しかったよ』
お題「天国と地獄」
5/27/2024, 12:14:46 PM