夜々々

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#お祭り


お祭りというと、何となく夏祭りを真っ先に思い浮かべてしまいそうになる。そこには熱狂がある。ええじゃないかと手を叩いき、はしゃいで浮かれて、非日常へとざぶざぶ、あっという間に潜ってしまえる。お祭りには、そういった浮足立った空気を感じ取る。それは何だか、虫さされに似ているかもしれない。じわじわと身体の中を蝕んでゆき、気がついたらもう「そういう風に」なってしまっているのだ。花火大会だとか、浴衣姿だとか、金魚すくいに射的に、それからあとは、まあいろいろと。からころと鳴る下駄の音。肺の奥底に滑り込む和太鼓の振動。暫く歩き疲れて張って来た脚と、じんわり汗でにじんで動きづらい背中を忘れてしまいそうになる。暑さは異様な熱さの厚さが重なっていて、ああなんでこんなことを言っているんだっけか。

そうだ、夏祭りの話をしていたんだ……。お祭りというと、何となく夏祭りを真っ先に思い浮かべてしまいそうになるが、別にお祭りは夏だけに集中してやってる訳でもない。青春に挟み込まれてる文化祭だって祭の一文字は入っている。フェスティバルなんて祭を英語にしただけだ。こういった類のものは春夏秋冬、見渡せばどこかにはある。そうした中で、夏祭りだけ、何か特別なものを持っているような気がする。

夏の魔法とやらの力がはたらいているのだろうか。夏祭りに人は幻想を持ちすぎているのだろうか。そうでも言っておかないと、お祭りの後にやってくるあの何とも言えない静けさの中にある胸騒ぎを説明できる自信がなくなってしまう。魔法の解けたシンデレラみたい。あんなに大急ぎで帰っていくものでもないけど、微かな焦燥感が拭えない、気持ち悪くもあり気持ちよくもある、あの心地は、そんなように思えるのだ。

夏祭りの虜になる。夏祭りのお姫様になる。ああまったく、なんてプレイボーイなお祭りなんだ。


7/28/2023, 3:41:38 PM