──泣かないでというのなら。
自分の嗚咽が酷く不快だった。どれだけ呑み込もうとしても噛み殺そうとしても口の端からこぼれてやまなかった。ぼやけた視界では愛しい橙色も柔らかな焦茶色も見えなくて、それがさらに喉の奥から悲しみをあふれさせていた。
「もう泣くなって。なあ、……」
まともな返事もできやしない。肩や頬や背中に触れたあたたかさに安堵するとまた嗚咽が大きくなって、止めようとして不格好に肩が跳ねる。
「お前の眼は綺麗な水色なんだから、そのうち涙に混じって溶けちまいそうだ」
そんなわけがあるか。バカを言うなと叩こうとして、寸前で相手がひどい怪我をしていることを思い出す。
加筆します
11/30/2024, 12:59:42 PM