とある恋人たちの日常。

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 俺は救急隊員で、年末年始の時もそうだったけれど、連休は仕事柄休めない。
 恋人の会社は整備会社でカレンダー通りだから休みなんだけれど、これまた年末年始と同じように緊急の呼び出しの時は対応するメンバーに率先して入ってくれる。つまり、その後に休みを取れるように調整してくれていた。
 
 そんな中、車の調子がおかしくて整備士を呼ぼうということになった。が、今日に限ってどの会社も連絡がつかない。
 
 どうしようと先輩が困っていたから声をかけた。
 
「彼女、呼びましょうか?」
「え、いいの!?」
 
 俺の恋人が整備士だということは先輩も知っている。藁にもすがる瞳で俺を見つめた。
 
「会社的に緊急事態があれば対応するって言っていたから、言えば来てくれると思いますよ」
「助かるー!!!」
 
 先輩はすぐにスマホを取り出して、彼女に連絡をする。すぐに繋がったようで、少ししたら上機嫌な顔で俺にお礼を言ってくれた。
 
 こういう時に、俺に呼び出してってことを言わずに、自分が連絡するのが実に先輩らしい。責任者としての自覚がある。
 
 そこはそれ、これはこれ。
 分別付けられる人だから尊敬する。
 
 しばらくして俺は救助で病院から出ることになった。すぐに着替えて車に乗り込む。
 ちょうど彼女が到着したようで、動きの悪い車に向かっていた。
 
 そして、彼女とすれ違う。
 ホンの一瞬、目が合った。
 でも直ぐにその瞳もすれ違い、お互い正面を見つめる。
 
 お互いプロの仕事をしようね。
 
 
 
おわり
 
 
 
三五三、すれ違う瞳

5/4/2025, 12:57:07 PM