駄作製造機

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【それでいい】

『おはよー。』

『おはよう。昨日のドラマ見たー?』

教室はとても騒がしい。

メガネの奥から見えるたくさんのクラスメイト。

欠伸をしている人、机に突っ伏して寝ている人。

多種多様な人たちがこの小さなクラスにぎゅうぎゅう詰め。

『そういえばさー、昨日センコーに授業遅れただけで怒られちゃって!マジありえなくない?』

『それな?出席してるんだから別によくね?』

彼彼女達は自分の意見こそ正しいと思い込み、別の意見を言う者を排除する。

此処はそんな場所。

嗚呼息苦しい。

上手く笑えない。呼吸ができない。

『クスクス、、マジ声ウケる〜。』

『聞こえるってば。プッ』

3年生最後のクラス。最後の1年間。

あるのは暗黙の了解と、絶対的な独裁。

自分の意見はみんなの意見。

みんなをよくわかっているのは自分だ。

自分が中心だ。

そんな考えの奴らばかりで全く吐き気がする。

お前は私の彼氏がなんかか?

アイツらは自分の尺度でしか物事を測れないんだ。

嗚呼可哀想。

少しだけ違った雰囲気を持つクラスメイトを認めることもできない。

みんな同じで何が面白いの?

わからない。

『ねぇ美香〜悠河の机触っちゃったどーしよ〜。』

何でそんなにふざけるの。

触ったから何?何か悪いの?その人が何かした?

わからない。

『そんなに言うことなくないかな、、害さないんだしさー。』

『そう思う?でもアイツ3Kだよ?臭い、汚い、キモい。』

嗚呼やっぱりこうなる。

彼は何も悪いことをしてない。

ただ少し、声が高いだけ。笑い方が独特なだけ。
『そう、、?かな、』

どんどんどんどんクラスに呑まれていく。

貴方達は彼のことを知らない。

本当は優しいところも、面白いところも、何もかも知らない。

なのに何でそんなことが言えるの?

"いじめなし クラスの平和 異常なし"

誰かが書いたいじめ撲滅標語が目に入った。

可愛らしい字。あの子が書いたんだな。

『でさー、その時悠河が後ろ通ってさ、、マジで臭かったわけ!みんなアイサイトで避けなきゃだよ?』

所詮、嘘なんだ。

全てにおいて偽善でできたこの世界は、息がしづらかった。

でも私は助けない。

どうせ無駄だとわかってる。

反感を買うのはこの人が悪いから。

そう言い聞かせ、私は今日も心の中で。

それでいい。それでいいと魔法の様に。

だって私も偽善者だから。

4/4/2024, 10:27:21 AM