駆ける鱗

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喉が乾いた

一面炎で包まれ、真っ暗闇に等しい中歩く私がいた。
ここは地獄か?と。降る雨は優しいものではなく、身体を蝕むような死を感じさせるもの。
この時に、この場所に、私という存在はいないのに。

川を視たが積み重なっていた。そして力尽きたのであろう。水がほしいと思った。一滴でもいいからと。それでも川には近づけず、焼かれるような熱さの中に私はいた。

目が覚めると、夫がとても心配そうにしてすぐに抱きしめてくれた。私は熱いだけ特に悲しみもなかった。しかし、夫はたくさん泣いた。戻ってこないのでは、と。貴女がと。

7/10/2023, 11:24:42 AM