霜月 朔(創作)

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軌跡



夜の帳が降りてくる度、
君の横顔を思い出し、
そっと、溜息を吐く。

笑い合った時間も、
黙って歩いた帰り道も、
粉々に砕け散った、
想い出の欠片となって、
胸の奥で疼くんだ。

俺はずっと君の隣で、
君の一番近くで、
何も言わず、何も求めず、
ただ、君を見詰めてた。

秘めてきたこの想いを、
言葉にしてしまえば、
全てが壊れてしまう気がして。
ずっと、黙っていたんだ。

だから、俺は、
君の隣にいられることを、
『幸せ』と呼ぶことにした。
それが、嘘だと知っていても。

例え、君が、
他の誰かと微笑み合い、
手を取り合う日が来ても、
俺は、心の痛みを隠して、
笑って見せるから。

俺たちが並んで歩いてきた、
この道の上に、
確かに残るのは、
親友としての――軌跡。

それだけが、
俺に許されたもの。
そんな事、ずっと前から、
分かってた筈なのに。
どうしても、
胸の痛みが消えてくれないんだ。

だから、今日も俺は。
胸の痛みの理由を、
知らないんだ、と、
自分に嘘を吐く。

いつか君を。
心から友達だと思えるように。




5/1/2025, 7:59:09 AM