【花畑】
幼い頃の夢を見た。
あたり一面が花畑の夢だ。
「 !」
目が覚めた時、顔が濡れているという事実に気づき、そして驚いた。泣いたのか、俺は。
「なんで……っ、なんで今更夢なんかに出てくる……。恨んでいるのか、俺を。」
8年前、両親が他界した。家族全員で遊園地に行った帰りに、飲酒運転をしていたトラックと衝突したのだ。たまたま後部座席に座っていた俺のみが助かった。当時6歳のことだった。
その後、祖父母の家に預けられた。
祖母は昔から体が強くないらしく、主に俺の世話は祖父が焼いてくれていた。余談だが、家事の手伝をしようと言ったことは何度もあるが、慣れているからと一向に手伝わせてくれなかった。
閑話休題。
とりあえず、中学に上がったからといって何か変わるでもなく、家が裕福な訳でもないから、せめていい高校に行こうと部活動にも入らず、勉強ばかりの日々を送っている。
それがせめてもの恩返しだと思ったからだ。
……たまに、
「たまに、普通の家庭が羨ましく思うことがあるよ。」
「たまに、自分の能力不足を恨むことがあるよ。」
「たまに……っ、たまに、あの時、俺も死んでたら、って思うよ。」
そういえば、あの花畑は、事故の日にみた花畑だった。遊園地内に併設されている植物園の一角に設置されていたものだ。
そういえば、あの日、あの時、両親はなんと言ったのだろう。
【ずっと愛してる!】
思い出せない。
9/18/2023, 7:42:23 AM