初対面でコーヒーをぶちまけた貴方へ
私がまさか、ドジでマヌケなアンポンタンを絵に描いたような貴方と結婚するなんて思わなかった。
せっかちで、騒がしくて、慌ただしくて。
とにかく、貴方といる時間は気が休まらなかった。
子供たちの成人式の時、貴方のドジが遺伝しなくて心の底から良かったと安堵したの。きっと貴方のドジが移っていたら、あんなに可愛いお嫁さんと孫ちゃんとは出会えてなかっただろうから。
貴方を見送ってから長い時間が経ったと思ったの。スマホで確認したらまだ四十九日も過ぎてない。
庭付き一軒家なんて今どき流行ってないのに、見栄を張って買ってしまうんじゃなかった。
この家、一人で住むには広すぎるし静かすぎる。
貴方のような賑やかなドジがいないと、お化け屋敷みたいに怖いの。……まだ、お化け屋敷の方がお化けがたくさんいて賑やかだったわ。
私の人生、貴方との暮らしが半分以上占めているの。
今更静かに余生を送るなんて都合のいい切り替えなんてできやしない。貴方がいなかった時の生活なんて、遠い記憶の彼方だから。
貴方のドジを求めているだなんて、私の頭もとうとうおかしくなったんだわ。
貴方には悪いけど、きっとあの世へ行ってもドジしているのでしょう。
くれぐれも神様閻魔様にはご迷惑をお掛けしないよう、細心の注意を払ってちょうだい。
そして、また私に出会ったときは。
何も落とさず、何もこぼさず、何にも躓かず。
普通にお会いしましょう。
『また会いましょう』
11/13/2024, 2:01:43 PM