最初は男の方が来た。まだ子供だ。
髪の柔らかい線の細い男で、高校のいけてるグループより少し大人しそうな感じ。格好が大人だから不自然な感じだ。
「宗教かなんかなん?」
「そういうつもりじゃないですけども…」
会うのはいつも昼間の公園だった。服装はグレーのスーツにノーネクタイ。浮いてはいないけど目立つ要素はない。VTuberの話、近所のイオンモールの話もぜんぶ通じないの。
「で。どうです。死にません?」
まじうける。こっから近くの駅どこですか?みたいな空気で聞いてくるのだ。
神は信じますかーて省いてそれなの。
「夜また来ますよ」
へいへい。コンビニのアイスコーヒー片手に適当に見送った。いつものように空間にぺらっと吸い込まれるように消えていった。
で、夜だ。真っ黒なレザージャケットの女が来た。
閉めたはずの窓から、秋の夜風がごぅと吹いてくる。季節外れの肌寒さを覚えて羽毛布団をかき集める。
「来るかい」
女が笑う。風さらにが吹いて、布団が剥ぎ取られる。
目を開けると都会の上空に居た。
「お、落ち…」
「落ちない」
薄茶の髪が上空の風に揺れている。
「お前が気に入らないもの、燃やしてやるよ」
見下ろした先は入ったばかりの中小企業の会社だった。予備校でバイトしながら苦労して苦労してあちこち駆けずり回ってやっと入った会社。
「やめてくれ…」
今時でない黒いレザージャケットを着た娘は、夢でみた通りに鉈を持ち不思議な印を赤く空中に描く。
「やめて欲しくないだろお前なら」
真っ黒な瞳がこちらを見つめている。
吸い込まれるような漆黒。笑顔なのに吸引力のある、何かを見通しような余裕の瞳だ。
鉈を縦に構える間に、昼間の男もやってきた。
「ここですか」
「そう」
「やりますか」
「やろうかね」
青年のほうも物騒な長いものを携えている。二人がこちらを見る。
もう身体どころか眼も動かせない。
「なぁ、どういう宗教なん」
「心外だな。死神だよ」
炎が二人の身体を取り巻いていた。
みつめられるだけで
普段皆の中心にいるあのこが、おっぱいを強調する服を寄せながら恥ずかしそうに見てくる。終電もいった、飲み会であれよあれよと残されたのは自分たち二人だけ。
色白のほほに薄いメイク。隣を通るといい匂いがする。お酒に酔った大きくうるんだ眼だ。
どんな声で名前を呼ぶんだろう。
どんな声で…。腰の奥がぎゅっとなった。
「今日泊めて下さるんですよね?なにもしない、ですよね」
するわけない!するわけないよ、後輩に、そんな…。と、心にもないことを呟く。なんでそんなにおっぱいを見せてくるんだ意味判るけど解りたくないわ!
3/28/2026, 6:16:32 PM