始まりはいつも世界の終わりと共にくる。
爆煙の中から現れたソイツはにこやかに微笑んでいた。
「やあ。久しぶりだね。会えて嬉しいよ」
「クソが。お前には二度と会いたくなかったのに」
「随分な言い様だなあ。僕と今世で会うのは初めてだろう?」
「だからだよ」
舌打ちしても悪態を吐いてもソイツは笑顔を崩すことはなかった。いっそ子供みたいな純新無垢な微笑みはコイツの所業とは正反対で、だからこそ気持ちが悪い。
「前世でも、前前前世でもあんな惨い殺し方したのにまだ僕を殺したいんだ? とんだサイコパスだねきみも」
「その言葉そっくり返すぜ。いい加減にしろよ、なんで何度殺されても世界を壊そうとするんだよお前は! 何回も転生を繰り返してでも終わらせたいのか!? そんなに憎いかこの世界が!」
声に混ざる血と怒り。魂の底から湧き上がるそれをどれだけ乗せて伝えても目の前で悠然と笑う笑の前には届かない。
「なんでだよ、なんでなんだよ。何がお前を拒絶した? 誰がお前を否定した? あと何度繰り返せばお前は諦めんだよ!」
「何度でも。君が生まれ変わるのをやめるまで」
しん、と空気が変わった。いつも笑みしか浮かべていない顔から感情が抜け落ちていた。
「ねえ、君は、君自身がなぜ何度も生まれ変わるんだと思う?」
「は?」
「教えてあげるよ。君が世界に望まれているからだよ、ヒーロー。僕という悪がいるから、君が望まれる。つまり、僕がいなければ君は望まれないし、きっと転生もしない」
わかるかい? とソイツの声は続く。聞いちゃいけない、と瞬間的に思ったが、脳髄の奥までそいつの甘い声は響いた。
「僕が世界を壊そうとする限り、何度だって君と会える」
会えて嬉しいよ、先程と同じ言葉を繰り返したソイツは、先程よりもずっと甘ったるい顔で笑った。
お題/始まりはいつも
10/21/2024, 5:56:52 AM