遠野 菓子

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春爛漫
『はるらんまんはるらんまんはるらんまん』
『何時ぞや何時ぞ 我に逢い給うた人よ』 
そんな声が聴こえるんだ
花粉症が酷くなって幻聴まで聞こえるようになったか…鼻のかみ過ぎで耳が変だもんな
『何時ぞや何時ぞ……逢い給うた人…』
凄い桜の花だもんな
この木って樹齢何年だろうな
それにしても大きな桜の木だな
なんだろう…何だか懐かしいような
微かに覚えてるこの場面
嘘だ、やめろや
そういう得体の知れないものは
俺は信じない……信じないけど
俺は心の中で誰かを待っている
誰を待っている
誰か来るのか
俺は動けないでいる
こんな凄い桜の木の下にいるんだから
写真撮って欲しいわ〜
「写真、撮りましょうか?
私も撮って欲しいんです」
「こんな感じで良いですか?」
「あ…はい」
「じゃあ次は俺、撮りますね」
俺はスマホのレンズ越しに
昔、愛した記憶の女性が立っていた
はっ……俺は泣いている
「どうかしましたか?」
「いや…花粉症が酷くて…目まで来ちゃって…幻聴も聞こえるし」
「逢い給うた人はアナタなのね」
その女性は俺の耳元で微かな声で言った
「何?それ」
「そこまでは覚えていないのね……小次郎」
「紗英」俺は呼んでいた
その女性は頷いて泣いていた 
こんな事って有っていいのか?
あ〰️花粉症とこの満開の桜に酔いしれ圧倒されているのか 
どうする……とりあえず
2人で写真でも撮って
「また会ってもらえますか」俺は自然と言葉に出していた…人生初のナンパだ
「もちろん」女性は微笑んだ
こんな事ってあるんだなぁ〜
なぁんか花粉症で良い事もあるんだな
俺はどこまでも花粉症の幻聴にしたい…
だけど俺はあの女性を「紗英」と呼んだ事の説明はひとつ
生まれ変わり
『はるらんまんはるらんまんはるらんまん』
『何時ぞや何時ぞ 我に逢い給うた人よ』

4/10/2026, 11:48:38 AM