No.39『別れの情景』
散文/掌編小説/恋愛
もう少しだけ一緒にいたかった。先輩がいなくなった部室は、どこか寂しげで。先輩が引退したのは随分と前になるけれど、まだこの学校に籍を置いている、それだけで、どこか安心していたのかも知れなかった。
「いよいよ、かあ」
今日は先輩の卒業式。卒業してしまえば、もう二度と学校では会えなくて。卒業後に都会へと行ってしまう先輩。学校でどころか、本当に二度と会えなくなるかも知れなくて。
そう思うと涙が出た。先輩の前では泣かないと決めていたのに。
「泣くなよ」
そう言われると、余計に泣きたくなる。
「泣いてませんよ。きっと局地的に雨が降っているんです」
そう言って見上げた空は、泣きたくなるほど青かった。
お題:ところにより雨
3/25/2023, 8:42:45 AM