明里

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舞台の裏側の
冷たい鉄の階段をあがっていくと
はるかな果ての景色に
あの日のわたしを見た気がした

紳士と淑女が派手な衣装で
あちこちで魅惑的な円を描く
時の壁に隔てられた異世界から
全てを繰り返す人々に背を向けると
頬杖をついて微笑むシルエットに
静かな雨が寄り添う

喜びの 怒りの 涙の
主張の 観察の 予想の
入り混じるヒトノヨノ
ざわめきと活気と
不安と安らぎと
入り混じるヒトノヨから

“随分遠くに来てしまったなあ”
古い楽譜を取り出すと
へっぴり調子なピアノの音がする
忘れられた優雅さはしばし息を吹き返す
窓をつたう水滴の音
白い陶器の緑の葉っぱ

喧しいヒトノヨに
めまぐるしいヒトノヨへ
どうしようもないヒトノヨは
どうにかなるようなヒトノヨが
ヒトノヨノ中の人のように
そっと僅かに手で触れた







2/4/2024, 5:46:52 PM