スランプななめくじ

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学校では人気者の優等生。
家では手のかからない愛娘。
愚痴ひとつ零さず、笑顔を絶やさない。
不気味な程に完璧な子供。それが私。

なわけがない。
そんな人間がいたら胃ごと吐いてしまう。
綺麗すぎて気持ちが悪い。

何時でもニコニコしやがって。表情筋がつりそうだ。
思ってもいないことを言う時だけはやけに舌が回る。
先生にいい顔をするのは進学を有利にするため。
推薦枠を貰えた理由の一つがこれだろう。
同級生と仲良くするのはただ都合がいいから。
抜き打ちテストの噂なんて、どこから得ているのか。
親の言う事を聞くのは詮索されるのを防ぐため。
あの子なら大丈夫って、馬鹿みたいに信じきってる。

絆なんて、打算と下心を混ぜ込んだ鎖だ。

愚痴だって、言わないだけ。
心の中では罵詈雑言が飛び交っている。
毎回歯を食いしばって暴言を飲み込んでいる。
目を細めて見下してるのを悟られないようにしている。
嘲笑が漏れないよう息を止めている。
お陰様でストレスは絶えないが、
周りからの評価は高いみたいだ。

毎日私を隠して、騙して生きている。
味方なんて居ない。晒け出してはいけない。
それでも私をこの世界に残したくて。
私が存在していることを証明したくて。

とうとう私は、日記帳という名の掃き溜めを作った。

言いたかった愚痴も、失望した誰かの行動も、
ついでに分からなかった問題も。
ここには取り繕う事無く、赤裸々に書き出す。
笑いたかった誰かの失態も、
恥ずかしかった自分の失敗も。
思い出して顔に熱を集めては、書く手が早まる。

誰にも言えないような、見せられないような日常が。
今まで隠していた、私の本性が。
お世辞にも綺麗とは言えない字体で踊り狂っている。

今日もまた少し、私の日記帳が黒くなった。

8/26/2024, 2:18:56 PM