ゆきやなぎ

Open App

#69【半分ずつの法則】

私は赤青鉛筆で日記を書いている。

日記と言ってもその日の出来事を箇条書きにしたためたもので
残念だったり失敗だった事は赤色
良かった事・心が温かくなった事は青色
これが私の日記のマイルール

・今朝は寝坊した 赤
・でも電車の遅延で遅刻にならなかったラッキー 青
・急な作業が増えて昼休みを削った 赤
・いいお天気 青空が美しかった 青
・彼から明日の約束はキャンセルのメッセージ 赤
・帰り道、いつもの街ネコとおやすみを交わす 青

..…とまぁ、こんな感じ
私の日常は残念な赤といい事の青がおよそ半分ずつで出来ていた。

ところがある日から状況が変わる。

・通勤途中の階段で誰かとぶつかって転んでしまった 赤
・上司の勘違いでとてもしかられ誤解をとけなかった 赤
・贔屓にしていたランチ屋さんが急な閉店 赤
・久しぶりに会った彼から突然の別れ話 赤
・あの街ネコが交通事故で死んでしまったと
 大家さんから聞く 赤
・田舎で暮らす母にガンが見つかった..…赤

赤、赤、赤、赤、赤!!!!

赤色で埋まる日常が続いた_

バキッ!

ある夜、赤色が折れた。
ずっと赤色ばかりだった赤青鉛筆は
ほぼ青色鉛筆になっていた。

ふぅ~~.…
と一呼吸おいて私は鉛筆削りをだすと
丁寧に、そっと、ささくれた元赤色部分から削り始める。

カリカリカリ..…
鉛筆を削る静かな音と削りカスから微かに匂う木の匂いがする。

削りだされた元赤色鉛筆部分の独特の形と模様が美しい…
なんて、
こんな日々の中でもささやかな綺麗に感動している自分に驚く。

カリカリカリ..…

赤青鉛筆は無事にどちらから書いても青色鉛筆に変わった。

....…

良い事も悪い事も人生半分ずつ
と東洋の教えにあるそうだ。
これで私の日常はきっとよくなるに違いない

だって、もう幸せの青色しかないのだから..…

(#シロクマ文芸部
「赤青鉛筆で日記を書く。」から始まる小説)

4/2/2023, 9:07:46 AM