『酸素』
慣れない環境で無理しているせいで、何もしなくても涙が出る。なんでこんなことしてるんだろう、と自暴自棄になる。いつもはこのあたりで止まるんだけど、今日は違った。息が吸えないくらいに泣いて、意識が朦朧としていた。いっそこのまま。そう思えば気が楽になるくらい、私はずっと泣いていた。
そのとき、スマホの着信音が聞こえてきた。恐る恐る手を伸ばす。そこにある名前はあなただった。思わず電話に出る。
「あー、また泣いてる」
向こうの呆れたような笑いが、すごく暖かかった。
「息吸えてないでしょ。深呼吸して、落ち着いてね。今からそっちに行くから、ちゃんと呼吸してるんだよ、どれだけ泣いてもいいから、ね」
私はあなたに「馬鹿」と言ってしまった。だって、あなたという酸素がまだここにないんだもの。
5/14/2025, 12:42:46 PM