マトリカリア

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 ひとのからだには、目に見えないうすい膜が張っていると思う。言いたいことが伝わらなかったり、誤解が生じたり、共通認識だと(一方的に)思い込んでいたことが違うとわかったりしたとき、あ、膜があるなと実感する。
 ないほうがいいとかなくそうとかいう話ではなく、ただ、あまり厚くならないよう注意深く見まもる。なにせ透明だから、放っておくと際限なく分厚くなるので。殻くらいにとどめておくのがいい。他人と関わることがおっくうになってしまう。
 時折、膜が鎧ほどになったひとを見かけるけど、それは自分を守った結果なんだと思う。

 無色透明の膜にすっぽり包まれたら、スノードームみたいに平和だろうか。
 そのときは日の当たる窓辺に置いてほしい。時々逆さにして雪を降らせてくれたら、それでじゅうぶん。



(無色の世界)



 一滴でも水が入ると黴が生えるらしいのでハーバリウムのなかでは泣けませんね。

4/19/2024, 8:14:52 AM