「私は、いい」
昼休み、ドッジボールに誘われたけど、私は一人で過ごすのが好きだから断った。
「...ふーん」
無愛想な私を見て、クラスメイトはつまらなさそうにグラウンドへ向かう。
「ねえ、たまにはみんなと遊んだら?」
次に話しかけてきたのは先生。
「別にいい」
私は一人が好きだし、誰かと遊ぶのはめんどくさい、小説だってまだ読み終わっていないことを伝えると、先生は「そっか」と言って困った顔をして教室を出ていく。
私はいつも思うことがある。どうして私のことなのに余計なお世話をしてくるのか、困った顔をするのか。
本当に分からない。ほっといてほしい。
翌日、クラスで飼っているハムスターのお世話担当だった私はみんなより早く登校した。
ハムスターは回し車で元気よく走っていた。
「朝から元気ね」
そう言いながら餌をあげようとした、そのとき。
「えっ」
ハムスターのゲージを倒してしまい、ハムスターが逃げ出してしまった。
__うそ、どうしよう。
先生に怒られるかも、みんなに怒られるかも...そんな考えが頭の中で暴れ出す。
「どうしたの?」
私は、その声のする方向へ、ゆっくり振り向いた。
「ゲージ倒れてる!?ハムスターは?」
当然の反応を見せたクラスメイトは、ゲージの中を覗いて、教室を見渡し、そして私を見た。
私は、ぎゅっと目を瞑った。
__怒られる。
「大丈夫?怪我ない?」
一瞬、私に向けられた言葉だとは理解できず、もしかしたら長い間、目を瞑っていたかもしれない。
「え...?」
「とにかくハムスター探さなきゃ!」
怒らないの?と言いかけたとき、次は先生が来て「あら、大丈夫?」と慌ててやってきた。
そのあとは数人が集まってハムスターを探し、すぐに見つけることができた。
「あ、あの...」
ごめんなさい、という簡単な言葉が喉に詰まって出てこない。
「いいよ、誰にでも失敗はあるから」
昨日ドッジボールに誘ってくれたクラスメイトがそう言うと、私は咄嗟に「なんで」と聞いた。
「なんで、怒らないの?それに私、昨日ドッジボール断って...すごい無愛想だったのに」
そう言うとクラスメイトたちはぽかんとした顔で
「当たり前じゃない?だって、仲間じゃん。このハムスターもさ、大切なクラスの一員だよ」
その言葉を聞いて、ああ、私はなんて馬鹿だったんだろう、と思う。
私は一人が好きだ。だけどそれはめんどくさいという理由で、それを隠すこともせず、表に出してしまった。ゲージを倒したとき、私はハムスターの心配なんてしなかった。
いつだって私は自分のことばかり考えてたんだな。
そう思うと本当に私が愚かに思えてきた。
「ごめんなさい」
やっと、この簡単な言葉を、初めて本当にごめんなさいという気持ちを込めて言うことができた。
微笑む仲間を見て、私も微笑んだ。
「今日、私もドッジボールやってもいい?」
微笑む仲間たちは、ぱあっと笑顔を輝かせて、
「もちろん! 」と大きく頷いた。
これが仲間なんだと、小学生ながらに思った。
12/10/2024, 12:47:16 PM