題:「世界の終わりに君と」
「明日世界が終わるとしたら、真斗はどう過ごす?」
唐突に問われた僕は、机の上に置かれてあるノートから目を離すことが出来なくなった。
前の席で体をこちらに向け、背もたれに腕を乗せて、椅子を傾けながらそう質問してきたのは、サラリとした肩まである黒髪を邪魔そうに後ろにやりながら、小首を傾げている風花。
「なんだって?」
意味はわかっていたものの、あまりの唐突さにそう質問を返さずにはいられなかった。
「だーかーらー、明日世界は亡びます!ってなったら、真斗はどう過ごすの?真斗は真面目くんだから、そんな時でも勉強してるのかな?」
冗談めかして人差し指をこちらに向けてくる。
「世界が明日終わるならねー……」
手を止めて、チラリと風花に目をやると、彼女とバチっと視線が合った。
黒く大きな瞳がこちらを真っ直ぐに見つめてくる。
早く答えを言わないと。
「僕ならいつも通り、ふつーに過ごすよ」
「はい?」
「いつも通り、君とおしゃべりして、一緒に帰って家に送ってく」
「えっ」
「あ、でも、世界が終わっちゃうなら、送ってしまったら君を守れないから、一緒にいるかもしれないな。だとすると────」
そこまで話していると、風花の手が目の前まで伸びてきた。
「なんだよ。どうした?」
「……は、恥ずかしくなるからやめ、て」
上がっている手で目の前の顔が見えなくなり、顔を横に傾けると、耳まで真っ赤になっている風花の姿があった。
2024年6月8日
SIVA5052
6/7/2024, 3:45:58 PM