【好きな色】
僕は可愛いものが好きだった。
小動物やキラキラしたお菓子、ぬいぐるみ、プリキュア、スカート…。
とにかく女の子っぽい可愛いものが好きでたまらなかった。
特にピンク色が大好きで、小学校の入学前に買いに出かけたランドセルも「絶対ピンクが良い!」「キラキラの飾りのが良い!」と言い張った。
だけど、両親から買い与えられたのは僕の希望とは真逆の紺色で地味なランドセル。
この日を境に、両親は僕に「普通になりなさい」と呪いのように毎日言い続けた。
小学校に上がって暫くした図工の時間。
「好きな色」をテーマに絵を描くことがあった。
僕は当然、大好きなピンク色で花やリボン、ウサギ、ハートなどを筆が乗るまま自由に描いた。満足する出来で、自信満々にそれを友達に見せた。
だが友達からの反応は僕が想像していたものとは違った。
「男なのにピンクとか可愛い物が好きとか気持ち悪い」と言われ、それをキッカケに僕は虐められた。
僕は普通じゃない。好きな色はピンクじゃ駄目だし、可愛い物も駄目なんだ。
青色が好き。カッコイイものが好き。
僕はそんな周りにとっての「理想の僕」を演じることにした。
月日は流れ、進路を決める時期がやってきた。
高校生になった僕はすっかり「理想の僕」が板についていて、そこそこモテたりもした。
…だけど、ずっと何処か靄がかかっていて、心からの幸せは感じることができなかった。
ココに居たらこれからも自分を縛られる。
そう思ったらぎゅっと苦しくなって、気づけば段ボール1つ分の荷物と一緒に、逃げるように都会へ上京していた。
…今日からココは、僕だけの家。誰にも文句を言われない唯一の場所。
真っ白なキャンバスのような部屋を僕は十数年間、心の奥底に閉じ込めてた色で染める。
「…できた」
桜色をメインにしたカラフルでポップな部屋。
女の子っぽい部屋だと言われるかもだけど、コレが僕の部屋。僕の城だ。
僕が僕であるために、僕は「好き」を隠さないことにした。
僕は可愛いものが好きだ。
6/21/2024, 8:10:17 PM