悪役令嬢

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『ルール』

湿原を越えた先にあるお屋敷へ
やって来た一人の若い娘。
大きな玄関の扉を叩くと若い執事が出てきた。
「ご用件は何でしょう」
「あの、酒場の掲示板で求人を見かけて、
それで応募したくて来ました」

執事に通された内部は広い玄関ホールになっており、
昼間にも関わらず薄暗く、壁に飾ってある肖像画
や鎧を着た彫像がなんとも不気味に感じられた。

執事に連れられ広い階段を上り、
長い廊下を歩いて部屋の前に辿り着いた。
「主、お客様です」
「どうぞ」

中へ入ると暖炉の火がぱちぱちと音を立てながら
燃えており、窓辺には艶やかな波打つ黒髪
を背に流した女性が佇み外の景色を眺めていた。
女性が振り返ると娘は息を呑んだ。
夜明けのように美しい人だった。

ゴクリと喉を鳴らしてから娘が口を開く。
「ここで働かせてください!」
「あなたのお名前は?」
「ベッキー・リンです」
女主人の赤い瞳が娘の姿をとらえる。
「ではベッキー、ここで働く上で
守って欲しい事がいくつかありますわ」

一つ目 名前を呼ばれたら必ず返事をする事
二つ目 満月の夜、東の別館には近付かない事
三つ目 地下室には絶対に行かない事

「その他、わからない事があれば
セバスチャンに聞いてください」
後ろに目をやると執事が一礼した。
「これからよろしくお願いしますね、ベッキー」

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テラスで紅茶を飲みながら隣に立つ執事に尋ねた。
「今度の子は長く続けられるかしら」
「どうでしょう」
「前みたいに突然いなくなったり、気が狂って
辞めたりしなければ良いのですけれど」

4/24/2024, 4:25:18 PM