#またね!
娘を抱いてマンションの屋上へ上がる。
晴れた日の夕暮れ、温い風が心地好い。
娘はいつもここへ来たがるが、すっかり大きくなって、抱いていると腕が痺れてくる。
そのうち激しく暴れ出したので、下ろそうとしたとたん、初めて口を利いた。
「マタネ、オカアサン」
キーンと耳鳴りがしたと思うと娘の背中が割れ、羽音と共に空へ舞い上がる。
私ははっとした。
子供など産んだ覚えがないことに気づいたのだ。
“それ”が遠く夕焼けの中に消えてゆくのを茫然と見送る。
私はいつから、何を育てていたのだろう。
4/1/2025, 1:40:30 AM