よむこ

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〈待ってて〉

一歩も二歩どころではない、ずっとずっと前を行く…というより“上を”行くあの人を追いかけてきた。
進学を決めたきっかけになった俺のスター。同じ高校で、同じ部活で、同じユニフォームを着て。あっという間の2年間で、追いかけても追いかけても、全然追い付けなかった。とても充実した楽しい日々だった、と思う。そんなただの思い出になってしまうのが悲しい。

(未来のための、祝福すべき門出だとは分かってるけど…)

卒業生が体育館から続々と出てくるのが見えてどうしようもない気持ちになる。上を向き、目を瞑って軽くため息をついた。そのまま目を開くと、

「どうしたの?元気ねえじゃん。」
「わっ…!?」

俺の顔を覗き込むスターがいた。
慌てて取り繕う俺の様子を見て、めずらしー!とか言いながら快活に笑ってから、急に真面目な顔つきになる。

「あのさ、」
「…はい。」
「待ってるから。」
「…はい?」
「だからあ…。待ってるから、さ。」

優しい笑みを浮かべて、肩をぎゅうっと抱かれた。
目の前がぼんやりと滲む。

「…そんな顔してないで、笑ってよ。」
「…はい。」

滅多に活躍しないと言われる表情筋を、目一杯動かして、笑顔で返事する。
待ってて。待っててください。
来年には必ず、また一緒に。


2/14/2024, 7:12:55 AM