霧つゆ

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 夜になると、シーツの海から抜け出せなくなる。横になってしまえば起き上がれない。ベッドの頭の方の柵が月明かりによって影を作り、檻の柵のようで、監禁されているようだった。
 部屋の電気もつけられず、ただ、世間からシャットダウンしていた。
 頑張ったところで褒めてはもらえない。当たり前だとか、さらに頑張れとか。それが足枷となり、重石の様に重たく頭上に乗っているかのようだった。
 日中は足枷を引き摺り回し、頭上の重石をあたかも、無いふりをしているからそこ、夜は動けない。ご飯を食べなきゃいけない。メイクを落とさなきゃいけない。部屋を片付けなきゃいけない。明日の支度をしなきゃいけない。
 しなきゃいけないことが部屋に充満していて、呼吸すらしにくい。このまま一生眠ってしまいたい。

 「世界が、一生真夜中だったら良かったのに。」

 そう言って、私は静かに泣いた。

No.17 _真夜中_

5/17/2024, 1:10:24 PM