寒がりだからカーテンを冬物に付け替えるとき素材や丈の選択には散々こだわった。その甲斐あって、二月の朝でも窓越しの冷気が足元へ流れ込んでくることはない。快適な室内環境を得て満足していたのに。
「おはよう。今日は良い天気だよ」
口調だけは優しいけれど容赦なくカーテンを開け放つあなた。満面の笑顔で、人間は起き抜けに日光を浴びれば健康的に一日を過ごせるんだと言い切られたら、やめてほしいと言い出せなくなった。毎朝几帳面に生地のドレープを整える仕草はもはや何かの儀式のようだ。
真冬の鈍くかすかな陽光があなたのシルエットを縁取り淡く光らせているのを、布団にくるまったままぼんやり眺めている。これは、寒いけど、暖かい。
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「カーテン」
10/12/2022, 7:59:12 AM