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『二人ぼっち』

 私は今まで愛と言う物を感じた事がない。

 親達は私を捨てた。どうせその後に離婚しただろう。

 ある人に拾われ、その人も私の事をアルバイトなどをさせるなど奴隷の様に扱い、全然家に帰ってこない。

 そいつが病気で死に、そいつの親戚をたらい回しにされたがその親戚達もクソだった。

 中3になり、来年は高校生になった時も、まだそいつらと居た。

 すぐにでもこの家を出たいと思っていた。でも、出来ない。勇気が出ないから。お金も無いし出た後の家もない。

 でも一つだけ、たった一つだけ、光があった。

 小学校3年生くらいの時の話だ。

 私はその時よく家から出て、近所の公園でぼーっとしていた。

 そしてその公園にはある少年がいた。私が実の親達と住んでいた時、その時の家の近所にその少年の家があり、よくその近所の公園で見かけていた。

 遊んだ訳じゃ無い。話した事は本当に少ししか無い。

 でもその少年は純粋で、優しくて、よく笑い、人を笑顔に出来る人だと感じた。

 私には少年が眩しく見えた。。凄くキラキラしていて、手が届かない空にある星の様な、そんな風に。

 その少年を、近くで見かけた。

 多分見間違いでは無かったと思う。隣に居る友達(だと思う)と笑っている顔を見た時、あの時と同じ光が見えたから。

 そして、正直私は疲れていた。実の親に捨てられ、ある人に拾われた後ももこき使われ、そいつの親戚にも嫌がらせをされ続け。

 だから私は準備して来た。あの時からずっと、この時の為に。そして、少年を手に入れる為に。

 丑三つ時と言われる時刻。ある場所まで行き、そこにある家のドアのインターホンを鳴らす。

 そして、昔に比べてかなり暗い雰囲気を纏った少年が出て来た。

『はい。なんですか、こんな時間に。』

 少年がこの時間に起きてるのも、一回のリビングにあるソファに座ってアニメ鑑賞をしているのも調べてある。警戒心が薄く、ドアを開けてくれるだろうことも読めている。

 私は少年を外に引っ張り出す。

 『おわっ』

と少年の声がし、ドアを閉めた後に少年の背中をドアにつける。

『な、なんだよ。誰だよあんた。』

 『久しぶりだな、少年。……どうしたんだ、そんなにやつれて。昔より雰囲気も暗いし。全く、お前の親は何をしているんだ。』

 『もしかして、、、公園のお姉さん?』

 『今の言葉だけで気づくか、普通?』
 
『面影があっただけです。それで、どうしました? こんな時間に? 何かありましたか?』

 『今日はお前に提案があって来たんだ』

 そう返答した後、私は少年に言う。

 『私と一緒に来ないか、少年? 汚れなんて無い、綺麗な、そして私たち二人の理想が叶えられる場所に行こう。』

 『は?』

 そう間抜けな声が返って来た。まあ想定の範囲内だ。

 『意味がわかりません。急すぎます。それにお金は? 住居は? 私たちの理想が叶えられる場所って? 親達にはどう説明するんです?』

 『急で悪かったな、抑えきれなかったんだ。まあ落ち着け。前のニつは問題ない。問題は理想が叶えられる場所、そして親への説明だな。すぐ解決するだろう。まず聞くが、提案を受け入れると仮定して、少年は親に説明をしようと思うか?』
 
 『…………』

 ここで黙る事も読めている。想定通り更に畳み掛ける事にしよう。

 『毎日喧嘩をし、ストレス発散に少年に暴力を振るう。学校では虐められ、かなり苦しいだろう。』

 『…………』

 『親は助けない。先生も見て見ぬふり。助けを求められる友達や親戚なんていない。もう嫌になりそうなんじゃないか? 親や学校のやつらと話したく無い、そして会いたく無いんじゃないか? それが今のお前の理想なんじゃないか?』

 『…………』

 少年は何も言わない。いや、何も言えない。だって真実だから。それが現実だから。

 『理想の場所と言うのももうわかっただろう。私と来ないか? こんな腐った世界から逃げよう』

 『…………本当にお金や場所は大丈夫なんでしょうね?』

 『ああ、勿論だ。全て用意してある。場所はお前も気にいるだろう。』

 『…………もしもお金足りないとかなったら許しませんよ?』

 『ははっ! 私を舐めるな。一生遊んで暮らせるさ。』

 『…………そのお金の集め方も、場所の探し方も、お姉さんが頭が良いって事で一旦無理矢理納得しときます。今準備しますので待っててください。』

 『ああ、わかった。』

 そう言って少年は家に戻る。準備しに戻るのも読めている。

 お金を集めるのなんて簡単だ。誰も居ない場所なんて私にかかればすぐ見つけられる。なければ作れば良い。そこに住人が居るのならそこら辺に埋めれば問題は無い。

 全て想定通りだ。少年の親や学校のやつらの行動も私が全て操った。少年を孤立させ、私が希望に見えるようにするのも簡単だ。

 5分10秒経ち、ドアが開いて少年が出て来た。

 『310秒。やはりな』

 『数えてたんですか。それに出てくる時間を知っていたかの様な、、、まあ良いです。行きましょうか。』

 『ああ、そうしよう』

 そう会話し、歩き出す。二人だけで暮らせる、二人の求める理想の場所へと。

 
 

 

 

 
 
 

 
 
 

 

3/22/2024, 5:40:07 AM