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海へ

 薄れゆく記憶の影に少しでも輪郭をつけようとするのは愚かでしょうか。会いにくくなって、会わなくなってからずいぶん経ち、あなたの声を忘れそうになることもこれまで何度かありました。言葉は僕らの関係をどうとでもできますが話してしまうと声とともに風化していきます。もう言葉が届かない今、手紙のように認めて僕の人生にとって大切な人を丁寧に愛でることが本懐なのです。
 あなたがこれを読んでいるのなら、僕はもういないのでしょう。何もかも唐突に告げることになって申し訳ないのですが、これが僕の向き合い方でした。欲を言えば、本当は、少しでもあなたに逢いたかった。僕がいたと確かに言ってくれそうな人全員に自分の言葉で伝えたかった。でも、わがままはいけませんね。やりたいことばかり数えるたびに涙が溢れてしまいますから。

8/23/2023, 2:45:38 PM