虐待は、愛から起こる。
図書館で適当に借りた実用書の中にそんな話があった。
曰く、良い子に育てたいが為にしつけが行き過ぎたり、良い人生を送らせたいが為に勉強や高得点を強要したりなど「その子が良くなる為」の行為がエスカレートしていくと、その行為はやがて愛情表現ではなく、単なる暴力へと変わっていくというのだ。
ここからはそれを読んだ後の俺の考えなのだが、まだ一人では生きられない子供にとって、親とは世界そのものであり、それを否定し、遠ざける事は、自分の安全を投げ捨てることに等しい。
だから子供は親に対して「どうやって逃げるか」ではなく「いかにして怒らせないか」を必死になって考える。
ならば、何もされなかった、無関心を貫かれた者は、完全に愛されていないのか。
……そもそも、愛情とは何だろうか。愛されるとは何だろうか。
俺を含めた人間が、こんなにも執着している愛とは、どういうものなのか。
俺の大好物である答えのない問いが、頭の中をぐるぐる回る。
ふと、視界の端に、何かが映った気がした。視線を向けると、写真立ての中から微笑みかけてくる彼女と目があう。
……愛情とは、何だろうか。
俺には、まだわからない。
愛情
11/27/2022, 1:03:03 PM